マリアナ海溝

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私たちが住むこの地球は別名「水の惑星」とも呼ばれ、地球の表面の実に7割は水に覆われています。

 

生物が最初に誕生したと言われる海では様々な生物が今この瞬間にも生まれては消えています。

 

しかし、現代の技術を持ってしてもこの90%以上はまだ発見・解明されていません。

 

地球上で人間が唯一到達できていない場所がズバリこの海の奥深く、深海です。

今回は世界で一番深いとされているマリアナ海溝についてみていきましょう。

まず、「海溝」とは何か知っていますか?


海の溝と書いて海溝、その名の通り海底の深く溝になっている部分、その水深が6,000mを超える場所のことを指します。

 

近年では詳しい定義が成され、大陸プレートに海底プレートが潜り込んでいるその境目のみを海溝と定めています。

 

また、プレートが潜り込んでいても6,000mを超えない場所は海溝とは呼びません。


海溝の多くは太平洋プレートに接しており、マリアナ海溝もそのひとつです。


また、世界の海溝で深いものは主に以下の通りです。
・マリアナ海溝/10,920m
・トンガ海溝/10,800m
・フィリピン海溝/10,057m
・ケルマデック海溝/10,047m
・伊豆小笠原海溝/9,780m

こうやってみてみてもマリアナ海溝が最も深いことがわかりますね。
 

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さて、ここからはマリアナ海溝をもっと深掘りしていきましょう。


このマリアナ海溝の位置ですが、北緯11度21分東経142度12分で、名前の通り北太平洋の西側にあるアメリカ合衆国・マリアナ諸島の東沖に位置し、伊豆小笠原海溝とも接しています。


海溝の幅は平均70km、最大約150km、長さは約2,550km、深さは最深部で先述した通り10,920mにも及ぶ巨大な海溝となっています。


150kmと聞いてあまりピンとこない方もいるかもしれませんが、東京駅を基点とした場合、栃木県那須塩原や静岡県静市までの距離が150kmほどとなります。この距離がすっぽり入るほどの海溝はやはり巨大で神秘的ですね。


深さ10,920mはどのくらいかというと、かの有名なヒマラヤ山脈に位置し、世界で最も高い山と名高いエベレストが8,848mとされていますので、そんなエベレストをひっくり返してすっぽり入れてもまだ余るほどの深さということになります。

海は深く潜れば潜るほど暗く、かかる水圧が重くなっていくことはご存知の方も多いかと思います。

 

ここからは深くもるにつれてどんな現象が起こってくるのか、詳しくみていきましょう。


まずは人間がダイビングで潜れる水深の最大は56mとなっています。

酸素タンクを背負って潜る場合、56mを超えるとほとんどの人が酸素中毒という症状になる為、56mを最大と定義しています。もちろん40m〜はリスクが大きく上がるため、水深40m以下を守ってダイビングすることを推奨しています。


ここでみるように世界の最大水深が10,000mを超えているのに対し、人間は自分の力ではたったの56mまでしか潜ることができません。

ここからは水深別に起こることを見てみましょう。


気圧は10mごとに1気圧かかると言われています。また1気圧は1cmの四角形(小指の爪ほど)の広さに1kg圧力がかかることになります。

一般的なダイビングの上限が56mなのでこの時、小指の爪に5kgとちょっとの圧力がかかっていることになります。なかなか痛そうですね。
 

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・水深80〜200m
ここは有光層と呼ばれ、水深200mが生物が太陽光を確認できる限界と言われています。ここまでは光合成が可能になる為植物プランクトンが光合成を行い、その栄養素を元に植物連鎖が起こるため、ほとんどの海洋生物はこの海域に生息しています。
 

・水深200m〜1,000m
ここは中深層と呼ばれています。生物には確認できないものの、太陽光が差し込んでいるギリギリのラインで、ここからを深海と呼んでいます。気温は有光層で25〜30度だったところが急激に低下し10度ほどになります。
ここに生息するハダカイワシという小魚は昼間は中心層にとどまり、夜になると有光層に浮上して生活をしており、有光層と中深層を行き来する珍しい生物も存在します。
 

・1,000m〜3,000m
ここは漸深層(ぜんしんそう)と呼ばれており、水温は更に低下しおおよそ4度、気圧は400気圧にも達します。ここに生息する有名な生物といえば、チョウチンアンコウです!

目が見えておらず、動きもゆっくりなので、あの有名な額から出ている提灯のような触覚を光らせ、餌を誘き寄せて生命を維持しています。
また、4,000mを超えてくると炭酸カルシウムが海水に溶け出してしまうため、貝類や甲殻類のほとんどは生息できないとされています。
 

・水深6,000m
この6,000mを超える深さの水域からは超深海と呼ばれます。ここから先は静かでとても暗く、栄養もほとんどないため、上層部からの生物の死骸や排泄物を餌とする特殊な生物が生息しており、ナマコの仲間やイソギンチャク・微生物が生息しています。
 

・10,000m
マリアナ海溝の最深部は実に10,000mを超えており、これは空を飛ぶ飛行機の高さと同じかそれ以上になります。

 

マリアナ海溝の中にある北緯11度19分・東経142度15分、水深10,920mの場所をチャレンジャー海淵と呼びます。

 

このチャレンジャー海淵はマリアナ海溝の最深部の位置する場所となっています。
ここまでくると小指にかかる圧力は実に1tにも及び、到底想像できないレベルになっていますが、こんなところでも生息している生物がいるというのはとても不思議ですね。

上空10,000mを飛ぶ飛行機に乗ったことがある人は身近にいると思いますが、水深10,000mに到達した人が何人いるかご存知ですか?2020年時点でそこに到達した人数はわずか13人しかいないのです。その人数の少なさからどれほどそこに到達することが大変なことなのかが伺えますね。そんなデンジャーな場所に挑むなんてチャレンジャー海淵だけにとってもチャレンジャーですね。
最後にこのマリアナ海溝を探索した人々を紹介していきましょう。

 

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・1960年
人類初のチャレンジャー海淵最初の到達者は1960年まで遡ります。
スイスで設計、イタリアで製造された有人潜水艇【トリエステ号】にその設計者であるジャック・ピカール(スイス)とアメリカ海軍のドン・ウォルシュ大尉(アメリカ)により人類初のチャレンジャー海淵到達を果たします。
到達に5時間、滞在わずか20分、浮上3時間15分とどんなに過酷な旅立ったかをそのかかる時間だけでも想像できるかと思います。

・2012年
人類3人目となるチャレンジャー海淵到達者は最初の到達から52年も年月が開くことになります。

 

なんとその人はタイタニックやターミネーターの監督としても知られるジェームス・キャメロン監督(カナダ)だったのです。映画監督の肩書きに加え探検家としても知られるジェームス・キャメロン監督は2012年に【ディープシーチャレンジャー号】に乗り単独で到達しています。

この時は到達に2時間36分、その後2時間半の滞在を経て1時間7分で浮上しています。

彼は最深部に到達時した際にはTwitterで「今最深部に到達した、すごく気持ちがいいよ」とツイートしており、この映像は日本でもニュースに取り上げられていました。

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・2019年
ジェームス・キャメロン監督のチャレンジャー海淵到達の7年後、人類4人目となる到達者が現れます。

 

その人は世界でも有名な探検家グランドスラムを達成したことでも名高いヴィクター・ヴェスコーヴォ(アメリカ)です。世界5大洋のほとんどの最深部が人類未到達と気づき探検家の血が騒ぎ、挑戦することにしたヴィクター・ヴィスコーヴォは人類初の5大洋最深部到達を果たすのです。

 

4年の開発期間を経て創り上げられた2人乗りの潜水艇【リミティング・ファクター号】でチャレンジャー海淵最深部に挑戦したこの旅は合計で8回行われており、このリミティング・ファクター号の登場のおかげで到達人数が飛躍的に伸びていきました。
 

また2020年には元宇宙飛行士で海洋科学者のキャサリン・サリバン博士(アメリカ)がこのリミティング・ファクター号に乗り世界で初めてチャレンジャー海淵を探索した女性となっています。


ジェームス・キャメロン監督やヴィクター・ヴェスコーヴォが探索したその最深部ではなまこの仲間やユムシの様な生き物を発見したと伝えられていますが、最も驚きなのはその最深部にまで人間が捨てたプラスティックのゴミがあったということです。

 

一説によりますが、海から生まれた私たち人間が便利を求め作り上げたものが、溶けることも分解されることもなく最深部まで沈み、その生態系を崩す可能性のあるもののせいで海を汚しているということはあまりにも悲しいことではないでしょうか。回収することも難しいこのプラスチックは今後どうなっていくのでしょう・・・


個々の力は小さいものかもしれませんがSDGsを意識した取り組みを、出来ることから参加してみることで何かが変わるかもしれません。


今回は未だ全てが解明されていない深海、その中でも最も深いマリアナ海溝について紹介してきました。

 

今後の解明がますます楽しみな深海、ひいては母なる海を愛し守っていくことで、後世に美しい海を残していけたらいいですね。



 

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